40代から始まるひざ周りの筋力低下。原因の解説から、自宅でできる対策までを解説します。
こんなお悩みありませんか? ひざの不安サイン8つ
□階段を下りるときにひざが痛む/怖い
□平らな道で何もないのにつまずく
□足が上がらず「すり足」になってきた
□以前より歩くのが遅くなった
□立ち上がるときに「よいしょ」と声が出る
□ひざが横にぐらつく感じがする
□歩幅が狭くなった気がする
□ゴルフのラウンド後半、ひざが不安定になる
3つ以上当てはまった方へ
それは加齢だけが理由ではないかもしれません。次章で原因を解説します。
ひざのぐらつき・つまずきの原因は「太ももの筋力低下」
ひざがぐらつく、何もない場所でつまずく、歩く速度が遅くなった——。こうした変化には、太ももをはじめとする脚の筋力低下が関係していることがあります。
私たちが立ったり歩いたりするとき、ひざ周りの筋肉は関節を動かすだけでなく、姿勢を保ち、着地時の衝撃を受け止める役割も担っています。ところが、年齢を重ねたり、からだを動かす機会が減ったりすると、脚の筋力が低下しやすくなります。その結果、足を十分に持ち上げにくくなったり、ひざを安定させにくくなったりすることがあります。
ただし、ひざのぐらつきやつまずきの原因は、筋力低下だけとは限りません。関節や骨、靱帯、半月板、神経などの状態が影響している場合もあります。痛みや腫れがある場合、症状が続く場合は、自己判断せず医療機関へ相談しましょう。
ひざを支えているのは大腿四頭筋、なかでも「内側広筋」

太ももの前側には、「大腿四頭筋」と呼ばれる大きな筋肉があります。大腿四頭筋は、ひざを伸ばすときに働き、立ち上がる、歩く、階段を上り下りするといった日常動作を支えています。
大腿四頭筋は、「大腿直筋」「外側広筋」「中間広筋」「内側広筋」という4つの筋肉から構成されています。そのうち、太ももの前側からひざの内側付近に位置するのが内側広筋です。
内側広筋を含む大腿四頭筋が協力して働くことで、ひざの曲げ伸ばしや、立っているときの姿勢を支えています。そのため、ひざ周りの安定を考えるうえでは、大腿四頭筋全体に目を向けることが大切です。
内側広筋は年齢とともに衰えやすい筋肉
年齢を重ねると、筋肉量や筋力は少しずつ低下する傾向があります。さらに、外出する機会が減った、階段を使わなくなった、座って過ごす時間が長くなったなど、日常の活動量が減ることも筋力低下につながります。
内側広筋だけが一律に衰えるというわけではありませんが、内側広筋を含む大腿四頭筋は、日常の立ち座りや歩行に関わる重要な筋肉です。脚を使う機会が減ると、立ち上がる、歩くといった動作を以前より負担に感じやすくなることがあります。
「最近、椅子から立ち上がるときに手をつくようになった」「階段がおっくうになった」という変化は、脚の筋力や移動機能を見直すきっかけの一つです。
階段の下りでひざが痛くなるのはなぜ?

階段を下りるときは、体重を支えながらひざをゆっくり曲げ、からだが下へ落ちすぎないように動きをコントロールする必要があります。このとき、太ももの前側にある大腿四頭筋が働きます。
階段を上るときには、からだを持ち上げる力が必要です。一方、下りるときには、片脚でからだを支えながら着地の衝撃を受け止める必要があります。そのため、ひざに不安がある人は、上りよりも下りのほうに怖さや痛みを感じることがあります。
手すりがある場合は無理をせずに使い、一段ずつゆっくり下りましょう。強い痛みがある場合は、無理に階段の上り下りを繰り返さず、整形外科などへ相談してください。
「すり足」「歩幅が狭くなった」は筋力低下のサイン
歩くときには、股関節やひざ、足首を動かし、片脚でからだを支えながら反対側の脚を前へ運びます。この一連の動作には、脚の筋力だけでなく、バランス能力や関節の動きなども関係しています。
脚を持ち上げにくくなると、足先が床に近い「すり足」になり、わずかな段差でもつまずきやすくなることがあります。また、転ぶことへの不安やひざの痛みがあると、無意識に歩幅を狭くして歩く場合もあります。
すり足や歩幅の変化には複数の原因が考えられます。「年齢のせい」と決めつけず、変化が続くときは専門家へ相談しましょう。
歩くのが遅くなったと感じる原因
歩く速さは、脚の筋力だけで決まるものではありません。バランス能力、関節の動かしやすさ、痛み、疲れやすさ、転倒への不安など、さまざまな要素が影響します。
例えば、ひざに不安があると、無意識に歩幅を狭くしたり、慎重に足を運んだりするため、以前より歩く速度が遅くなることがあります。
歩く速度の変化は、自分では気づきにくいものです。「家族や友人と歩くと遅れるようになった」「信号を渡り切れるか不安になった」と感じたら、日頃の歩き方や脚の状態を見直してみましょう。
O脚とひざの痛み・筋肉の関係

O脚とは、両脚をそろえて立ったときに、左右のひざの間が開いて見える状態を指します。ただし、見た目だけでひざの状態を判断することはできません。
変形性膝関節症では、関節軟骨の変化などに伴って、ひざが外側へ曲がるような変形がみられる場合があります。また、ひざの内側に負担が偏ることもあります。
一方で、O脚に見えるからといって、必ずひざに痛みが出るわけではありません。痛みや変形が気になる場合は、自分で矯正しようとせず、整形外科でひざの状態を確認してもらいましょう。
放置するとどうなる? 変形性膝関節症・ロコモへの流れ
ひざに不安や痛みがあると、外出や運動を控えがちになります。活動量が減ることで脚の筋力や移動機能が低下し、さらに活動しにくくなるという循環につながることもあります。

※このような変化が、必ず一方向に進むわけではありません。ただし、脚の筋力や移動機能の低下が進むと、ロコモや、将来介護が必要となるリスクにつながる可能性があります。
また、ひざの痛みや動かしにくさの背景に、変形性膝関節症などが隠れている場合もあります。変形性膝関節症では、初期には立ち上がりや歩き始めに痛みを感じ、進行すると階段の上り下りや歩行が難しくなることがあります。
こうした変化に早めに気づくためにも、まずは現在の脚の筋力や移動機能を確認してみましょう。ここからは、自宅でできるセルフチェックをご紹介します。
まずはセルフチェック|自宅でできる4つのテスト
ひざのぐらつきやつまずきが気になるときは、脚の筋力やバランス能力、歩行能力に変化がないかを確認してみましょう。
ここでは、自宅で取り組みやすい4つのセルフチェックをご紹介します。ただし、セルフチェックの結果だけで病気や筋力低下の有無を診断することはできません。痛みや強いふらつきがある場合は無理に行わず、医療機関へ相談してください。
① 片足立ちテスト|何秒できれば目安になる?
片足立ちは、脚の筋力やバランス能力を確認する方法のひとつです。転倒しないよう、壁や机など、すぐにつかまれる場所で行いましょう。
片足立ちテストの方法
- 両足をそろえて立ち、目を開けたまま前を見ます。
- 両腕を体の横へ自然に下ろします。
- 片方の足を床から少し離し、姿勢を保てた時間を測ります。
- 支えている足の位置がずれたり、浮かせた足などが床についたりしたら測定を終了します。
- 最長60秒として2回測定し、長く立てた方の時間を記録します。

年代別の平均時間も参考に
厚生労働省の資料では、開眼で行う片脚立位時間の年代別平均値が次のように示されています。
| 年代 | 片脚立位時間の平均値 |
|---|---|
| 65~69歳 | 40.8秒 |
| 70~74歳 | 32.5秒 |
| 75~79歳 | 25.5秒 |
| 80歳以上 | 16.2秒 |
年齢が上がるにつれて、片足で姿勢を保てる時間は短くなる傾向があります。ただし、これらはあくまで年代別の平均値です。「この時間を下回ったら異常」という判定基準ではありません。
片足立ちの結果は、体調や運動習慣、ひざや腰の状態などによっても変わります。秒数だけでなく、以前より立てる時間が短くなっていないか、強いふらつきがないかなども確認してみましょう。
※厚生労働省の測定方法を参考にしています。測定中に痛みや強いふらつきを感じた場合は、すぐに中止してください。
② 立ち上がりテスト|下半身の筋力を確認
立ち上がりテストは、決められた高さの台から立ち上がれるかによって、下肢筋力を確認するテストです。
日本整形外科学会が示す正式なテストでは、高さ40cm、30cm、20cm、10cmの台を使用し、両脚または片脚で立ち上がれる高さを確認します。
自宅で試す場合は、まず高さ40cm程度の安定した台や椅子を使用しましょう。
立ち上がりテストの方法
- 高さ40cm程度の台に腰かけます。
- 両脚を肩幅程度に開き、両腕を胸の前で組みます。
- 反動をつけずに、両脚で立ち上がります。
- 立ち上がった姿勢を3秒間保ちます。

両脚で立ち上がれた場合は片脚で行う方法もありますが、転倒するおそれがあります。片脚で試す場合は、必ず補助する人がいる安全な環境で行ってください。
立ち上がりテストによるロコモ度の目安
日本整形外科学会では、次のような目安を示しています。
- どちらか一方の脚で40cmの台から立ち上がれないが、両脚で20cmの台から立ち上がれる:ロコモ度1
- 両脚で20cmの台から立ち上がれないが、30cmの台から立ち上がれる:ロコモ度2
- 両脚で40cmの台から立ち上がれない:ロコモ度3
高さの異なる台を使った詳しい測定は、転倒しないよう安全な場所で行う必要があります。不安がある場合は、40cm程度の台から両脚で立ち上がれるかを確認するだけにとどめましょう。
反動をつけたり、勢いよく立ち上がったりすると、後方へ転倒するおそれがあります。ひざなどに痛みを感じた場合は、すぐに中止してください。
③ 2ステップテスト|歩幅から歩行能力を確認
2ステップテストは、できるだけ大きく2歩進んだ距離から、歩行能力を確認するテストです。
普段の歩幅を測るものではなく、バランスを崩さずに進める「最大2歩幅」を測ります。下肢の筋力だけでなく、バランス能力や柔軟性なども含めた移動機能を総合的に確認できます。
2ステップテストの方法
- 床にスタートラインを決め、両足のつま先をそろえて立ちます。
- バランスを崩さない範囲で、できるだけ大股で2歩進みます。
- 2歩目の着地点で両足をそろえます。
- スタートラインから、着地点のつま先までの距離を測ります。
- 2回行い、距離が長かった方の記録を採用します。

歩幅は身長によって異なるため、測った距離をそのまま比較するのではなく、次の式で「2ステップ値」を算出します。
2歩分の距離(cm)÷身長(cm)=2ステップ値
たとえば、身長160cmの人が2歩で240cm進んだ場合は、「240÷160=1.50」となり、2ステップ値は1.50です。
2ステップ値の年代別平均
全国の自立して生活する20~89歳の男女8,681人を対象にした調査では、40歳以降の2ステップ値の平均が次のように示されています。
| 年代 | 男性の平均値 | 女性の平均値 |
|---|---|---|
| 40~44歳 | 1.59 | 1.50 |
| 45~49歳 | 1.56 | 1.47 |
| 50~54歳 | 1.54 | 1.47 |
| 55~59歳 | 1.52 | 1.47 |
| 60~64歳 | 1.51 | 1.43 |
| 65~69歳 | 1.45 | 1.41 |
| 70~74歳 | 1.42 | 1.38 |
| 75~79歳 | 1.36 | 1.30 |
| 80~89歳 | 1.20 | 1.18 |
2ステップ値は、年齢が上がるにつれて低下する傾向があり、特に60歳以降は低下が大きくなることが報告されています。
ただし、年代別の数値は平均値であり、病気や筋力低下の有無を判断する基準ではありません。体調や運動習慣、ひざや腰の状態などによっても結果は変わるため、同年代と比べる際の参考として確認しましょう。
2ステップ値によるロコモ度の目安
日本整形外科学会では、2ステップ値について次の目安を示しています。
| 2ステップ値 | 判定の目安 |
|---|---|
| 1.3以上 | 2ステップテストではロコモ度に該当しない範囲 |
| 1.1以上~1.3未満 | ロコモ度1 |
| 0.9以上~1.1未満 | ロコモ度2 |
| 0.9未満 | ロコモ度3 |
測定するときは、滑りにくい床で準備運動をしてから行い、できればご家族などに見守ってもらいましょう。ジャンプはせず、バランスを崩した場合は記録に含めず、無理のない範囲でやり直してください。
④ ロコチェック(7項目)とロコモ25
「ロコチェック」と「ロコモ25」は名前が似ていますが、異なるチェック方法です。
ロコチェックは、日常生活の動作から運動器の衰えのサインを確認する7項目の簡易チェックです。一方のロコモ25は、身体の痛みや日常生活で感じている困難、外出や社会参加への不安などについて答える25問のテストです。
まずは、短時間で確認できる7項目のロコチェックを行ってみましょう。
7つのロコチェック
次のうち、当てはまる項目がないか確認してください。
□ 片脚立ちで靴下がはけない
□ 家の中でつまずいたり、すべったりする
□ 階段を上がるのに手すりが必要である
□ 掃除機の使用や布団の上げ下ろしなど、家のやや重い仕事が困難である
□ 2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である
(1リットルの牛乳パック2個程度)
□ 15分くらい続けて歩くことができない
□ 横断歩道を青信号で渡りきれない
日本整形外科学会では、このうち1つでも当てはまる場合は、骨や関節、筋肉などの運動器が衰えているサインであり、ロコモの心配があるとしています。
ただし、当てはまった項目だけで病気の有無を判断することはできません。腰や関節の痛み、筋肉の衰え、ふらつきなどが悪化している場合は、運動を始める前に医療機関を受診しましょう。
「ロコモ25」は25問に回答するテスト
ロコモ25は、直近1カ月の身体の痛みや動かしにくさ、日常生活、外出、社会参加、不安などについて25問に回答し、その合計点からロコモ度を確認するテストです。
- 7点以上16点未満:ロコモ度1
- 16点以上24点未満:ロコモ度2
- 24点以上:ロコモ度3
25問すべてをこの記事に掲載すると長くなるため、詳しいチェックは日本整形外科学会の公式サイトで行えます。
ロコモ度は、立ち上がりテスト、2ステップテスト、ロコモ25の結果をもとに確認します。それぞれの結果で該当したロコモ度のうち、最も移動機能の低下が進んでいる段階が判定結果となります。
今回のセルフチェックで気になる結果があった方は、無理のない範囲で身体を動かすことを意識してみましょう。次は、ひざを支える太ももの筋肉を自宅で動かす方法をご紹介します。
参考文献
・厚生労働省「体力測定マニュアル」
・厚生労働省「介護予防マニュアル(第4版)関連資料」
・日本整形外科学会「ロコモONLINE|立ち上がりテスト」
・日本整形外科学会「ロコモONLINE|2ステップテスト」
・日本整形外科学会「ロコモONLINE|ロコチェック」
・日本整形外科学会「ロコモONLINE|ロコモ25」
・Yamada K, et al.「Reference values for the locomotive syndrome risk test quantifying mobility of 8681 adults aged 20–89 years: A cross-sectional nationwide study in Japan」Journal of Orthopaedic Science, 2020.